ペダステ新インターハイ編FINALを観てきた

楽しかった。

 

 先ず公演が発表された時に完結!と書かれていた事に死にそうな気持ちになったことを覚えています。

2日間を描くのにおよそ3年掛かっているのに、1回の公演でインターハイ最終日のゴールまでを描くと言い切られた衝撃は大きかったです。

ダイジェストでお送りする気なのか?!年表でも読み上げるのか?!取り敢えずチーム2人に

 

「手強い奴らだったなぁ、青八木!」

「あぁ、純太!」

 

とか言わせて呉南の浦久保・庭妻との闘いは有ったことにして終わらせちゃうのか?!手嶋さんと葦木場くんの山岳争いとか有る?!とかそんなことばかりを考えてました。

悲しい話ですが、終わらせることを急く理由を考えると「畳まれてしまうのかな」という不安や悲しみで一杯でした。きっとこの不安は私だけでは無かったと思います。

とは言え、新作公演楽しみ!円盤たくさん買っちゃお!最前クレ!クレナイ!トラック追ってゲネご招待は勘弁してくれ!等々…チケット確保に奔走しつつ心から楽しみにしてました。やっぱりペダステが大好きだから。

例え最後でも、観たい気持ちが勝ちました。そりゃそう。

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さて、2月21日金曜日14時から新作が幕を開けました。初見の感想は「凄く楽しかった」に尽きます。

1回観ただけでいつもの通りの楽しくて面白いペダステに、頭がパーになっちゃうかも!という感じ。いつも通りのペダステでした!

ペダステ観劇はスポーツか?という観ているだけなのに疲労する作品なので2時間50分も見たらお尻が割れてしまうんじゃないかと思ったんですが、銀河の座席はふかふかだし、なにより休憩が挟まることによって1時間少々のペダステを2回観るような感じで凄い楽だった。

1時間20分の間にたくさんの事があるんですが全部目が離せなくて、スピーディーなのに心にガツガツ爪痕を残して進んでいって…終わるとあっという間だったな?!と驚きました。

正直、過去の公演のいくつかには「何時になったら ♪過酷さも困難も〜 が始まるんだ」とか「体感5時間くらいある」とか思ったこともありました。今回は過去最長の公演時間にも関わらず、あっという間でした。

面白かった、に加えて「悲しく無かったこと」が凄く嬉しかったです。

もっと悲しくて寂しくて、見る度に作品が終わってしまう事が辛いという気持ちで劇場を出ることになるのではないかと危惧してました。

実際は終演後は楽しかったー!とか早くまた観たいー!とかのポジティブな感情しか湧いてこなくて。毎公演心から楽しいというこの事実。幸福です。

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今回の公演の所感を書き残しておこうと思います。

演劇のテクニックの事はわからないので気持ちの儘です。記憶で書いているので前後諸々間違ってるかもしれませんが見逃し配信がまだなので許して頂きたい。

 

・女子ファン

\\指差すヤツやってー!//

 この時、純子が「森の忍者?!森の忍者?!」と東堂さんの異名を挟んでくるのが好きでした。

指差すヤツをやるメイドの腕を下ろす幽虎とか。

大阪公演ではコーレスになって更に楽しかったです。

ペダステ名物面白モブが初っ端から登場したことで「FINAL」に対する緊張感がかなり柔いだ気がしました。「いつものペダステだ」と思えました。

 

・OP

 いつもの「スタートを切る」から始まるのですがとてもテンポが速くて力強くて、柔いだ緊張感がまた高まりました。

今回のOPダイジェストも「弱虫ペダルの最初」からやります。

その中でパズルライダー役の村上渉さんが福ちゃんで登場するのですが、これには初っ端からエモーショナルでビンタされました。村上さんは「箱根学園、始動」で福ちゃんを演じられているので、突然の「本物」の福ちゃんとの再会に心が躍りました。2016年10月10日ぶりの再開は一瞬ですが、本当に嬉しかったです。

 

・新インターハイ編あらすじ+名乗り

 新インターハイ編での各キャラクターの見せ場になるシーンが順々にスポットライトを浴びて行きます。

一つ一つのセリフにはそのシーンの記憶が蘇ります。本当にここがカッコイイんです!

全てのキャラクターがこのインターハイの道の上で生きてきたことを描くダイジェストの最高の締めだったと思います。

駆けてきてスポットライトを浴びる伊藤玄紀氏の杉元は格好良くて痺れます。伊藤氏の杉元もまた、インターハイを走る1人の選手でした。

スタート前の手嶋さんが話し始めるのを遮る総北の面々と鯨井康介氏のサイレントな小芝居はペダステらしくてのっけから楽しい!個人的にはめちゃめちゃ顰めた顔を寄せていくパターンが好きでした。

 

・スタート前手嶋と葦木場「のぞむところだよ、純ちゃん」

 このシーンは舞台上であるからこその物理的な距離感によって改変されていて、原作の時とは違った情緒がありました。

原作では手嶋さんの心の声に呼応した葦木場くんはその後、すっとぼけているのですが(それも大好きだったけど)、ペダステでは完全に手嶋さんに向かって話しを続けていて「会話」になっていました。結構大きな改変なのですが凄く自然なシーンになっていました。

これはスタートラインの時に手嶋さんからのドリンクを「受け取れない」と答える葦木場くんのシーンが改変されて挿入されていたことを思い出しました。

ペダステは原作の画面儘・セリフ儘ではないシーンがよくあります。

そのシーンで「伝えたいこと」はオミットされず、改変して自然に挿入することが多い作品で、2.5次元作品としては再現度の低いやり方ではあると思うのですが、原作へのリスペクトがあると感じるのはこういう場面です。大事なことはちゃんと伝えている。

また、このシーンから既に葦木場くん役の富永勇也氏の芝居には多分に情緒が含まれていると言うか…セリフに抑揚があって、ヒートアップの頃から彼を観ている私はシンプルに感動しました。失礼ながら、「まだ初日なのに、演技がかなり良いな?!」て。

 

・スタート前呉南

 原作で読んだ時「運営本部前だぞ」が見開きで、ゾッとしたことをよく覚えています。待宮くんとはまた違う戦略の浦久保くんの怖さを語るに十分過ぎるシーンでした。ペダステでは少しだけ危機感は薄まって鏑木くんのピンチ感はマイルドになっていたように感じます。

栗原大河氏の「ナハッ」の表情が本当に素晴らしくて、赤茶色い照明の下では見え難いのですが目を凝らして見ました。本当にいい表情をするんです。カメラはグイッとアップで少し煽りで抜いて頂きたい!

 

・後方集団

 泉田くんによる「ティーーーーーブレイク!してたんだろぅ?」がペダステらしいです。

何故かネチっこく喋り続ける泉田くん。原作にはない表現なのにペダステだと慣れ親しんだ泉田くんです。ペダステは2.5次元作品だけど、3.0次元の俳優の芝居と高い親和性を持つ作品だということを意識せず先導してくれます。

「Tシャツを着ると別のチームの選手になる」という

ペダステのお約束と「後方集団です」の名乗り一つでさっきまで泉田くんだった河原田氏は「泉田にそっくりな選手」に、手嶋さんだった鯨井氏は「手嶋にそっくりな怪我をした選手」に変わります。

私は演劇において宣言は非常に強い力を持っていると思っています。「後方集団です」と名乗られたらキャストは後方集団の選手になるのです。衣装よりもずっと想像力を支配するパワーを持っていて、こういった宣言による場面の急激な変化に演劇の凄さを体感するといつも心震えてしまいます。

 

さて、熊本台一のキャプテン『鬼軍曹』井瀬慎也くんをリーダーにした後方集団の面々は自転車に乗っていることを無視しだしたり、全員それぞれが自由に動きだしていきなり目が足りなくなります。楽しい。本当に「ペダステらしい」シーンです。円盤や配信で如何程収録されるかわかりませんが、このシーン百瀬氏がすごく可愛いくて是非百瀬氏を目で追って頂きたい!

 

・陸ザメ

 集団が蛇になることを前回のインターハイ3日目を描いたTheWINNERで体感していたので、サメも見ることができるだろうと思っていました。

サメは、怪我人を切り捨てた後なので少人数精鋭という点まで含めてあのスッキリした陣型だったのかな、と勝手に思っておきます。

尾ビレカッコイイ。毎回「尾びれです」を待機してました。背ビレはたまに跳ねるのが可愛い。

 

・山桜

 インターハイ3日目は全力を出し切った選手はDNFしていきます。

前作で京都伏見の木利屋くんが落ちていったシーンが大好きだったのですが、今作は山口くんが真っ先にその場面を迎えます。

仕事をやり切って倒れ込む彼の姿は悲壮感はあまり抱きませんでした。それよりももっと、讃えたい気持ちが勝るというか。

先行する総北・箱学を捉えて彼のインターハイは終わります。最後までインターハイを走りきれない事はどれほどの覚悟なんでしょうか。

演劇で、ヒトの身体で表現されたこのシーンは漫画を読んでいた時よりもずっと山口くんの「最後の走り」を強く意識させるものでした。体感って凄い。

わりとすぐにパズルのお仕事が始まるので、さすが監督!とも。

 

・呉南vsT2

 チャンピオンで、集団に飲み込まれた手嶋さんが黄色いジャージの選手に声を掛けたら青八木くんだったシーンを見た時「漫画みたいだ」と思ったことを忘れません(漫画だよ)。

絶望の手嶋さんの前にスポットライトの中に飛び込んで現れる青八木くんはこのシーンの震える感情を甦られせてくれました。

同調直列走法(シンクロストレートツイン)、こんなん泣いちゃう!としか言えません。

手嶋さんと青八木くんが2人っきりでインターハイの舞台で走るのって初めてではないでしょうか。ペダステ的な演出で「前にも有ったよ」とかだったらお恥ずかしい!でもとにかく、チーム2人が2人で走ってるこの姿がエモーショナル!ファンタスティック!天晴れ!早く配信でもう一度見たい!

「俺たちT2、チーム2人」のセリフに『そう!あなた達はずっと2人、2人っきりでチーム2人を演じ切ってくれた!』と勝手に胸を熱くしてしまいます。

同調直列走法で追いついた後の浦久保くんからのデスゲームの挑発、漫画で読んでた時は「やめて!ノらないで!サッサとシンクロストレートツインで先頭の総北に戻って!」とか思ってしまって勝負に乗る手嶋さんが嫌だったんですけど、ペダステではサクサク進むので嫌とか思ってる暇を与えませんでした。

おまけに、さっきまで死ぬほどエモくて泣きそうだったのに「5番…バンドウエイジ」とか言うんです。ペダステのこの緩急、本当に楽しい。

「マイケルジャクソン」の回の鯨井純太の「アオッ!」の返しが好きです。「みのもんた」の回の「誰が名司会者だ」とか「リチャードギア」の「なに嬉しくなるようなこと言ってんだよ」とかも。

円盤に…全部…11回分収録してください、てアンケートに書きます。WEBアンケートの受付は3/31まで!

今作のペダステは弱虫ペダル名物過去回想についてはいつも通りセリフの語りで補われていますが、それでもかなりエピソードをカットしています。

それによってレースの展開自体にはより集中し易くなっていると感じました。

「勝ってくれ純太」の青八木くんの全身から溢れる感情のエネルギーが凄くて、悲しいシーンでもないのに「気圧されて涙が出る」という回が何度かありました。青八木くんというか八島氏の演技に。青八木くんのDNFの時に再びこの現象に見舞われます。

「三年間共に闘ってくれてありがとう」はこのインターハイ編を戦走り抜いた、チーム2人を演じる2人にも通っているのでメタな視点でも胸を掴まれるセリフでした。泣いちゃうってば!

T2vs呉南はレースの勝敗のハラハラよりも役者の芝居が凄くて…本当に最高の2人だった。

 

・庭妻繁典

 「庭妻くんおるやんけ!智平さんやんけーーーー!!!」と心の中でスタオベしました。段竹にお髭がある時点で気がつくべきでしたが。

キャストが発表された時に庭妻くんがいなかったので「何考えているんだペダステ!浦久保くんを語るのに庭妻くんがいないとか信じられない!まぁパズルライダーの誰かが下は黒のスパッツで『呉南の庭妻です!』みたいな感じでやるのかな?!」等と思ってたんですがちゃんと居ました庭妻くん!

庭妻くんは浦久保くんの良心であり、浦久保くんの天才故の孤独さの語り手として不可欠なので本当に居てくれて嬉しかったです。

呉南の選手は東村はいませんが、里崎がいます。嬉しい。

T2との決着後、手嶋さんのセンサーを捨てようとする浦久保くんを止める庭妻くんに「これが見たかったのだ」と思いました。

庭妻くんの浦久保くんへの友情ってとにかく慈愛に満ちている気がします。庭妻くんの浦久保くんへの友情、良心としての存在意義がそこに集約されている大好きなシーンです。

 

・浦久保優策

 ペダステでの新キャラクター、浦久保優策くんはなんと言ってもその髪型に「浦久保くんってドレッドヘアだったんだ」と知ることが出来ました。

浦久保くんの「勝ちたい」は友達への想いで満ちているのが特徴的です。先輩達との関係性を示すシーンはとことん削られているので、より「友達の為に」というキャラクターになっていたと思います。

彼の見所は表彰式のシーンに在ると思っているので後述します。

ジャージの袖がかなり余っていてその細さに驚きました…細っっ!

 

♪M1

♪ただ早くて ただ強くても 足りないーー

♪ゆけ ゴールまで エェェスたーちよーー

八島氏のソロパートってこれまでも結構機会があったとは思うのですが今作も実に味のある歌声を披露してくれております。大阪千秋楽では感情が昂ぶり過ぎてメロディの方が気遅れしてしまったのでしょう!

T2のデュエット部分が凄く好きでした。いや全部好きだった。

ペダステはミュージカルではないのですが、劇中歌には状況や感情が物凄く含まれていて…ライブじゃないからね!とは言いますが歴代の劇中歌でライブやって欲しいくらい…流石に無理かな。せめて、せめて楽曲配信して…。

 

・DNF青八木

 「楽しくないわけないだろう」という青八木くん。彼と彼を演じる八島氏のインターハイのラストランは物凄いエネルギーに溢れていて、またしてもその気迫に圧されて涙が自然に溢れてきました。

特に2/22マチネと2/28ソワレは八島くんから迸るエネルギーというか圧が凄くて、28ソワレはこの世相から「明日ちゃんと千秋楽の公演はあるのか?」と不安になるほどでした。「今日が千秋楽じゃないよね…?」と休憩の時に友人に確認してしまうほどの熱演とその公演を観ることが出来たという事実。幸福です。

八島くんの熱演は「芸術の圧が凄くて涙が出る」のだと思います。私は岡本太郎太陽の塔を初めて見た時に強い威圧感を感じたのですが、その時の気持ちに近いものが八島くんの演技にはありました。演劇は芸術であることを今一度、体感を持って思い知りました。

 

「あれが俺の三年間のゴールだ」と箱根学園の選手の背中が見えるのですが、ここでの音楽が物凄くカッコイイんです。早く配信で観たい聴きたい!サントラ出して欲しい!manzoミュージックが大好き!

全力で激漕ぎした青八木くんが鏑木くんへ「お前のお陰で賑やかなインターハイだった」と告げて総北最初のリタイア者となります。

でも、ここは悲しい気持ちよりも先に、これからの鏑木くんに物凄く期待を持たせてくれます。悲しんでる暇を与えません。

 

・銅橋vs鏑木 DNF

 弱虫ペダルという作品において「先輩」の存在はとても大きく、影響力が強いです。

鏑木くんは憧れた小野田くんと見守ってくれた青八木くんの二人の先輩の力を得ているキャラクターです。更に彼には負けられないライバルも既にいます。強くならないわけがないんです。真っ直ぐ強く進む期待のルーキーは観ていて本当に愛おしい存在でした。

ていうか原嶋元久氏が上手い!演技がうまい、ペダリングが上手い!銀河で下手側に座った時に顔の向きの導線上の座席だった回が有ったのですが、その表情の必死たるや。鏑木くんは全力で青八木くんの意思を継いで走っていることを肌で感じました。彼もまた演技の気迫が凄い。

ところで私は彼が挨拶で語る「毎日が誰かの初日で、誰かの千秋楽」という言葉が大好きなのでなんとか円盤に収めて頂けないものかと。

毎日、毎公演が誰かにとっての特別な公演であるということを言ってくれる原嶋氏のこの挨拶は後世に語り継がれるべきだと思います。私は語っていきます。

 

今回からの新キャスト、岸本卓也氏の銅橋くんは物凄く「兼ちゃん」でした。

キャストが変わったと思えないほど自然に銅橋くんはそこに居ました。兼崎健太郎氏の演じてきた銅橋正清を研究してくれたのかな、と思いました。キャストはキャラクターの外殻、その血と骨と肉をもって板の上で「キャラクターそのもの」としては変わらずに作品の中で生きていることを体感によってまた知る、そんな銅橋くんでした。

銅橋くんが激漕ぎするシーンで、葦木場くんがずっと銅橋くんを見ています。私は葦木場くんが大好きなので、後輩を「しっかり見ている」先輩としての葦木場くんの姿が観られて凄く嬉しい気持ちになりました。サイレントでもキャラクターの存在を示せるようになった富永勇也氏の成長に震えたシーンでもありました。

今作、事ある毎に葦木場くんは他のキャラクターをよく見ていました。その視線の先に今全力で頑張っているキャラクターがいることがなんだか無性にキャラクターの「生」を感じて嬉しくなりました。

 

・最速の槍 泉田

 どんな時でも楽しくて面白くて実にペダステ!という感じがするんですよね、泉田くんの筋肉たち。

3代目のファビアンはお髭が大変可愛らしいです。そして歴代で一番「父」っぽい。そんな栗原氏のファビアンが大好きだったのですが、毎回3秒くらいしかご尊顔が拝めない(顔伏せてしまう)ので毎回めちゃめちゃ目を凝らして見ていました。

今回から登場のペテルとマーク。さっきまで激漕ぎしていたスプリンターにそっくりのトップガン

マークのリップ音が堪らない!ペテルの日替わりは大阪の「なんでやねん」がシンプルで好きでした。

 河原田氏はずっとオリジナルキャストで泉田を演じ続けてくれて、可愛い後輩から強く頼もしい先輩になり、ミスターペダステ!の貫禄でした。

彼がずっとこの作品に出演してくれていたからペダステはずっと「ペダステ」で在り続けられたと思っています。最高のラストランでした。

…700mも彼が引き離したのに山で追いついてしまう手嶋さん、クライマーとしての才能の塊じゃない?

 

・山岳賞(葦木場vs手嶋)

 私は葦木場くんを世界で一番愛してるオンナなのですが、原作でのこの勝負が本当に地雷というか…未だに葦木場くんが負けたことが悔しくて悔しくて堪らない、負けた葦木場くんを許せない、もう彼を選手として応援することは出来ないかもしれないと思っていた勝負でした。

ペダステでその勝負を観ることでいよいよ持って葦木場くんを嫌いになってしまったらどうしよう、「とみーのせいにしよう!」くらい私は酷いオンナです。だって葦木場くんが好きなんですもの。好きなものは嫌いになりたくないのでそんな戯言で足掻いておりました。

そんな拗らせた私の気持ちなんてペダステには関係ないので、手嶋さんが2年生を引いて登った先で葦木場くんは「勝負しよう!」と宣います。

流れる第九、雪ちゃんに発射させられて「オウ!」と力強く答えて葦木場くんは仕掛けます。痺れました。世界で一番カッコイイ!

後輩たちに勝負へ送り出される手嶋さん。急転のこの勝負の始まり、非常にファンタスティックです!

原作では兎に角過去回想の長い勝負ですが、ペダステでは過去回想と東戸くんは潔く削がれています。でもテンポが良いので2人の過去の詳細は知っていても知らなくても自然なシナリオだったと思います。ペダステでは「今」2人が激漕ぎしている勝負に焦点が絞られるので非常にレースに集中し易くなっていたと思います。

ところで、東京公演の記憶が曖昧というか、私が気が付いたのが大阪公演からだったのですがハイタッチをSEだけではなく実際に手を合わせてしていて、偶々座っていた席の関係でその生の音を聞くことが出来て震えました。最高。

 

 このシーンで語ることは一つ、「葦木場くんが楽しそう」です。

富永氏が実に楽しそうに、嬉しそうに、正に心が弾むように走っています。全力で、でも手嶋さんに向けている表情はずっと笑顔で。

そんなことが出来たのか!と富永氏の演技の成長ぶりに本当に感動しました。好きなキャラクターの生を感じるというか、「葦木場くんは今楽しいんだ」というのが伝わってきて、私も本当に嬉しくなってしまうシーンでした。負けちゃう勝負なんですけどね。

全力で走る鯨井氏、富永氏に対してどっちが先にゴールしたかなんて、ただそれだけの事でした。全力で走って、闘って、勝った方と負けた方がいる。実にシンプルな事でした。

「悠人に箱根学園の誇りを語っていたのに」とか「箱学のエースが山岳で飛び出して「手嶋さん」に負けるなんて」とか「箱根学園が負けたのは葦木場くんのせい、この戦犯!」とかずっと思っていて、私にとってはこの勝負の勝敗は「推しを自ら否定してしまう」という本当に辛いものだったのですが、ペダステでの体感によってラストの真波と坂道の一騎討ち同様に勝敗はただの結果であったと素直に受け止めることが出来ました。

葦木場くんのことが好きなまま、彼のインターハイを終えることが出来ました。これを救いと言わずになんと言えば良いのでしょうか。拗らせヲタクにはわかりません。

この勝負をペダステを観て、以前よりもずっと好きになれて、今は原作を読み返してもあまり葦木場くんを非難する感情は浮かんできません。原作だけでは触れられなかったキャラクターの心情に少しだけ近づけたような気がします。そういう不思議な力が、2.5次元にはあるのです。

葦木場くんが刺したところで手嶋さんはまだ一漕ぎ踏み込んでいる、というシーン描写も秀逸だったと思います。

 

 今作で初めて富永氏へ「大きい」と思いました。

葦木場くんは大きいんです、2m2cmもあるんです。

実寸2m2cmの若手俳優なんていないので「大きく見えること」は非常に重要なんです。

富永氏の身長が前回公演から著しく伸びたわけではありません。彼はその芝居で私に「大きい」と思わせてくれたのです。本当に驚きましたし嬉しかったです。

正直、顔は似てないんです。そもそもペダステはビジュアルを似せる気なんてないかもしれませんが。

でも今作、富永氏の葦木場くんに「葦木場くん」を毎公演感じることができました。大好きな葦木場くんが血と骨と肉を伴って走っている、嬉しくないわけがありません!好き!無理!しんどい!大好き!

今作は演技もペダリングも富永氏の芝居は「今日が最高」を毎日毎公演更新し続けたと私は思います。

大阪千秋楽は熱が入り過ぎて、芝居は情緒よりもエネルギー極振りって感じでしたけど、観てるこっちのボルテージも上がっていたのでまぁ良し、GOOD!最高!マーベラス

毎日毎公演観るのが幸せでした。幸福です!(n度目)

 

倒れ込む手嶋さんで暗転、休憩。

ここまで本当にあっという間の1時間20分でした!

 

〜休憩〜

・京都伏見

御堂筋くんがまだ仕掛けていないことを思い出しました。書き損ねてましたが、スタート直後の水田くんのフェイズ82のジェスチャーが可愛くて大好きでした。追い抜かれていく時の水田くんの方向転換が凄く自然で上手い。水田くんもインターハイを走る1人の選手なのですが今回の彼の散り際の「さらば!インターハイ!」はコミカルですが切ない。

 

・先頭を走る総北2年生

 既に総北は3人しか選手がいないんですが全く悲壮感がありません。3人で肩組んでゴールする夢を来年も見てほしい。とはいえまだまだ後ろから追って来ちゃうんですよね、他の学校の選手が。

この束の間の総北2年生の友情感、可愛いし愛おしい。

 

・小鞠vs悠人

 天羽氏は体の関節どうなってるの?!という柔らかさでビックリします。何度見てもその首の位置はどういうことなの?!と驚きました。人体の不思議。

「俺ちょっと変わったんスよ」ここにきて悠人の1年生らしさ、可愛らしさが満開です。

2日目スタートの鏑木くんだってそうだったのに「漫画」だから忘れがちになるんですけど、疲労ってそんな一夜明けて回復するもんじゃないのは当然ですよね。黒田くんと同じ気持ちで「あぁー悠人にはまだ経験が!」とショックを受けました。でも飯山氏が「誰が!2対1だって?!」と戻ってきてくれた時の頼もしさは半端なかったです。

天羽氏、飯山氏もまたオリジナルキャストで演じ切ってくれた2人です。その2人がインターハイ最後の日に一年生同士の一騎討ち。気持ちがアガらないわけがない!悠人は音楽もカッコイイので本当にサントラをなんとか出して頂きたい…。

そういえば、ここしばらくcomplete!おじさん見てないですね。

 

・鳴子・真波坂の攻防

 カーブ二つと弓池、の弓を引く真波のマイムが好きでした。かわいい。

2つのカーブを越えた時に流れるやたら牧歌的なメロディが印象的でした。

そんなにここで鳴子くんが消耗するなんて!と後ほど驚くのですが…相手が真波ですもんね。

 

・鳴子DNF

鳴子くんはどうして最後までインターハイを走りきれないのでしょうか。でも彼もまた散り際の美しい男です。

「自転車と友達をこよなく愛する鳴子くん」を感じることが出来ます。本当に鳴子くんは友達を大切に思っててヒーローみたい!カッコイイ!

「覚えてるのはワイだけやろなぁ」には私はつい、和田雅成氏のことを思い出してしまいました。

たくさんの今泉がここまで繋いできてくれたんですよね。百瀬氏が長く鳴子くんを演じてくれたことと合わせてここまでの鳴子章吉の来た道へ想いを馳せてしまうのでした。雑念に塗れていると言われれば、そう。

 

・御堂筋vs今泉

御堂筋くんと今泉のライバル観って実に高校生らしい応酬なんですよね。相手がハマればザマァみろ、覆せば全然平気だった!みたいなツラをする。仲良く喧嘩して。

ここでエース同士が闘ってしまうから毎年小野田くんと真波が一騎討ちに!つい何か言いたくなる展開なんですがペダステで観てると体感が勝ちました。

 

・水飛沫、水溜り

富永氏の水飛沫が大好きでした。

ゆっくり動くのって難しいんですけど、頑張ってたし長い腕を大きく回すダイナミックさが堪らない!最高!100点!優勝!という気持ちで毎回観てました。

滴に見立てられたヘルメットの動きが…というかヘルメットを滴に見立てるという発想が凄い。

水溜りが「セーフ!」て「言う」のが好きでした。喋る!雨が降っているという状況の表現としては傘ウーマンが出てくるだけでも十分だし、今泉が顔を拭うマイムをすれば水飛沫が邪魔だって伝わるのに、ここに水飛沫役や水溜り役を板の上に乗せてマイムで表現するのが実に「ペダステらしい」気がします。緊迫のレース中だけどこのペダステらしさが実に楽しかった。

 

・真波を引いてきた黒田

 久しぶり!!黒田くん!

「そのオーダー、遅かったな!」にゾクリとする感じ、昨年のインターハイでの「上がれ!真波!」と同じくらいゾクゾクしました。

 

♪M2(ガクガクの脚、今泉)

 ♪走り続ければー 立ち止まらなければー 

♪いつかは ゴールに 辿り着けるだろうかー

 この時の山﨑氏の太ももがプルプルで、その直前の一騎討ちの過酷さを物語っているのですが、千秋楽にしてプルプルを通り越して脚がガクガクで歌が終わって袖に捌けるところで彼の腰を鯨井氏が支えるところが見えちゃって。それどころではないと思うんですが、総北は支え合うチーム…とつい思ってしまいました。

めちゃめちゃイイ顔でソロ歌い出しを担う伊藤氏がカッコイイし。

♪弱虫な挑戦者という曲のことを何故か思い出しました。

 

・真波vs坂道

 原作で総北高校が二度目のインターハイを制した時にどうしても「漫画の展開としてどうなのか」ということを考えてしまいました。

「2年連覇してしまった敵無しの坂道くん」「あれだけイキり通していたのにまたDNFとなった御堂筋くん」「リベンジの叶わなかった箱根学園」…漫画のセオリーとして2年目のインターハイは「坂道くんが負けて翌年リベンジする」というのが大半の読者の「読み」だったと思っています(ペダルナイトとかで渡辺先生がお話されている内容はここでは加味しません)。

今回のペダステで一番驚いたことは、このような原作の展開への懐疑的な感情を一切抱かなかった事です。

最後の真波vs坂道のスロープの激漕ぎはあまりにも熱く、その果てにどちらが先にゴールするか、それがその後の展開的にどうかという思考を抱いている暇がありません。

ただ坂道が先にゴールをしただけ。それだけのことでした。真波が先にゴールしていてもきっと同じことを思ったと思います。

決着が着いた時に抱く闘っていた2人へ湧き上がる思いは実にシンプルな賞賛でした。

よく闘った、よく回した、全力であった。

渡辺航先生が原作で描いたこの勝敗で読者に感じて欲しかったことは、もしかしたらこのシンプルな感情だったのかもしれないと少しだけ他所事を考えてしまいました。ただ、私は2.5次元による体感でより原作が描いていたものを感じられたなら実にラッキーな事だと思います。

 

・俺を抜けショ!坂道

沿道から巻ちゃんが飛び出してくるところが本当に「ま、まきちゃん!!?」と驚きました。これは原作で読んだ時と全く同じ驚きでした。まさか本当に巻ちゃんが飛び出してくるなんて思わなかったんです。あの日あの時のあの感動がここに!みたいな安いコピーになってしまいます。

村上さんの巻ちゃんには「巻ちゃんがいる」という衝撃と喜びが溢れました。総北メンバーが巻ちゃんのシルエットでスロープにいるだけでも巻ちゃんがそこにいて「こうやって巻ちゃんと一緒に走っていることを描くんだ」と思ったのに、まさかジャージ着た巻ちゃんがスロープの上を走る姿がまた見られるなんて!

葛折りのカーブで、果てしなく続く一本道で、草生茂る田舎町で、ペダステのスロープの上で巻ちゃんは坂道の前を走り続けていました。こんなの泣いちゃう!

 

・♪まだ見たことの道を

 ♪過酷さも 困難も 失敗も 自転車は全部 楽しさにかえてくれる

 この曲が始まるとペダステが終わってしまうのですが、やっぱり良い曲で大好きな曲です。

「この曲を誰が歌うか」は私にとっては結構思い入れがあったのですが今回はDNFとなった選手の歌唱から、まだレースを走っている選手達の歌唱に続きます。この曲のシーンは観て味わった心の震えが全てというか。明文化出来ない文章力と語彙力でお恥ずかしいですが「好き」ということです。

 

・真波と東堂

このシーンについては…このシーンは荒北さんじゃないとダメなんじゃないかと少なからず思いはしたのですが、そんな話のわからないことは置いておくことにします。

真波が泣いている描写はある回から「背を向ける」になっていて、数回の公演でより洗練された表現になったと思います。実際に泣いても泣いてなくても難しいシーンだったと思うので。

 

・表彰式

表彰式へ向かうリタイアした総北の面々がブレーキ音をやっていたり、跳ねたり…この小芝居が如何程円盤に収まるかはわからないので見逃せないシーンでした、可愛い。

このシーン、オリジナルの部分が多かったですね。

原作では小野田くんの緊張が可愛らしい感じでしたがみんなと一緒なので実に微笑ましい。

「そして拓斗ぉ!2m2cm!」の指す先を見上げる富永氏の葦木場くん、「おっきぃ」と呟く悠人、メタでとっても可愛くて大好きでした。

私は葦木場くんの「2人で獲った山岳賞だね」が本当に受け入れ難かったのですが、ペダステではそのモノローグは無く「純ちゃんの分も貰っておくよ」になっていてペダステにまたしても心救われたシーンでした。

この表彰式のシーンから袖に捌けるところで富永氏が本当に毎回毎回違うパターンを見せてくれました。特に大阪28ソワレの花束の香りを嗅ぐ葦木場くんが最高だったので一生語り継ぎたいと思います。雪ちゃんに花束を渡す、とかも好きでした。

 

さて、この表彰式のシーン、浦久保くんが実に良い味を出しています。

表彰式のシーンは非常に賑やかなんですが、舞台下手の浦久保くんだけ物凄く静かなんですよね。

そもそも彼は表彰式にいないところを彼の良心の化身・庭妻くんが引っ張ってくるのです。彼は実に静かに表情台を見ていました。その表情は非常にリアルだな、と思いました。

勝ちたい人が、勝って表彰台に登っている人に向ける気持ちは悔しさやらせなさに満ちていて当たり前だと思うのです。浦久保くんもまた勝ちたくてレースに挑んでいたことを感じるシーンでした。

個人表彰には小さく拍手を送ってくれたのも、その拍手の覇気の無さがまたリアル。

浦久保くんばかり観ていたので、上手側で何が起こっていたのかは円盤で見ることにします。

 

・♪over〜

♪青空のスポットライト 

 もう語る言葉もありません、大好き。

 

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日替わり箇所の備忘

・女子ファン

 しれっと新キャラがいる。のぶこ推しなので再会できて嬉しかった。のぶこ可愛い!

 

・5番…〇〇

 この場面でその日替わり?!とド肝を抜かれました。

 

・御堂筋くんが追いついてきたところ

「うーばーいーつ〜」が個人的にドツボでした。

 

・集団(モブ)

 葦木場くんにそっくりな彼の「より楽になる👉」へ「自転車はどうした!」のツッコミが入るようになってから更に楽しかった。ペダステは都合よく自転車がなくなる。いえ、最初から無いんですけどね。

 

・箱根学園の補給

 銅橋くんにそっくりの彼と浦久保にそっくりな彼によるパンを巡る🥖攻防。大阪千秋楽のパンが浦久保似の彼の鞄から出てきたの驚いたしめちゃめちゃ面白くて、正直このシーンの東堂くんの顔が一切思い出せない。

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本当に楽しいペダステでした。

全編楽しくて最高の2時間50分でした。

配信は3/14から!円盤は6/17!サントラ売っててくれ!過去公演のBlu-rayも出してくれ!

 

 

 

 

 

 

 6年6ヶ月12作品を劇場で観ました。

原作が好きだから観始めた作品でした。

ペダステではどうやって表現するんだろうと思いながら読んだ事も何度もありました。

大好きなキャラクター達の走ったレースを体感させてくれて本当にありがとうございました。

舞台「弱虫ペダル」をこれまでもこれからも私は一番大好きです。

 

ありがとう。悔いはないよ、1mmも。